オリジナルBL

今日は以下オリジナルBLなので注意ですよ。


失恋をした。

俺の恋は死んでしまった。
俺は失くした自分の恋愛感情を、なんとなく小さな生き物のように想像していて、そいつはふわふわした尻尾を持つ体長30センチくらいの、犬か猫みたいなイメージだ。ペットが死んでしまった感じ。悲しいけど比較的おだやかに懐かしむことができる。
ああ、残業帰りでも声が聞きたくてビールを買って家に寄ったな、ずいぶんといじらしかったなとか。あいつが好きなジャーナリストの著作をたくさん読んだな、とか。ボランティア活動に誘われて、俺にはあまりピンとこなかったが、交友関係は格段に広がった。
この1年の生活が眩しかった。1日に何度もメッセージのやり取りをして、一喜一憂した。今は死んで墓の下にいる、ふわふわした尻尾の小さな生き物。罪のない、無邪気な俺の恋。

頭の良いやつで、立体の把握が特に優れていた。複雑な形の商業施設に入ってもすぐに構造を理解して、迷うことがなかった。あとアイロンかけがめちゃくちゃにうまかった。あれもまあ立体か。
頭が良かったので、あいつは俺たちの関係がだめになっていくタイミングを正確に読む事ができた。言い争いたくない、と優しい声で言った。
優しくて、頭の良いあいつの別れ話は、まるで詰将棋みたいで反論の筋がひとつもなかった。笑ってしまった。

本当は。
本当は分かっている。俺の恋愛感情は、ふわふわした尻尾を持つ体長30センチくらいのものではない。可愛らしい犬猫のようなものでもない。体長5メートルくらいの醜い生物で両目から血を流しながらずっと叫んでいる。恐ろしい声で。 一晩中、公道を四つん這いで駆け回っている。
もちろんそいつは死んでない。
今も俺の背後にいる。そいつの生臭い息を背に感じる。