「君のクイズ」感想

 

このミスでとりあげている人が多かったので読みました。
あまりミステリー要素があるようには思えなったのですが、
材料を集めて他者を推理していくという点では同じなのかも…?

クイズ番組「Q-1グランプリ」決勝戦にて、
主人公は勝利を目前にしていたが、
対戦相手のクイズタレントが不可能な正解を決めたため、敗北する。
世間では八百長疑惑が巻き起こるが、
主人公は対戦者がなぜ正答できたのか、
丹念に紐解いてゆく…というあらすじ。

和製「スラムドッグ$ミリオネア」構成。
だが他者が視点になっている点が違う。

ラストまでばれ

主人公の、クイズに対する姿勢が美しい。
この人の世界はクイズでできていて、人間はその周囲を巡っている。
だからこそ彼には対戦相手のことが読み解けなかったし、読み違えた。
苦いラスト。

競技クイズは百人一首に似ている。
答えが確定するところでボタンを押さなければならない、
もしくは「今は思い浮かばないが、たぶん分かる」と思ったところでボタンを押さなければならない。すごいプレッシャー。
(ところで遅まきながら、天保山が日本でもっとも低い山じゃなくなってたのを知りました。ええー!)

主人公と彼女の恋愛の終わりの書き方もよくて、
彼女は人間と暮らすのに向いてない人で、
なるべく誠意をもって穏やかに終わらせようとした。
主人公はめちゃくちゃ傷ついてへこんだけど、
その感情もクイズが分解してきれいなものに変えた。
(しかしもしかして彼女は原稿が描けなかったのがストレスだったんじゃ…)

ところで「主人公くんは対戦者くんに対して恋情を持っており、
対戦者くんの美しさに見とれたりしている…」という
おそらくふじょしの妄想が本人に届いておる場面があり地獄。
これ絶対実話がもとになってると思う…。

逃げられない恐怖の喩えとして舞城王太郎さんの「熊の場所」が使われており、私もあの小説の熊をぶち殺すシーンが好きなので、センスがよいなと感じた。
(しかしラストでひっくり返されるけど…)