ミュージカル「SIX」来日版感想


ヘンリー8世の6人の妻たちがライブツアーをしており、彼女たちは6人の中で1番酷い目に遭った1番の王妃をリーダーに据えるためにステージの上でその半生を歌い始める…というあらすじのミュージカルです。

本国で鑑賞した人たちみんなお勧めしてたのでずっと見たかった舞台でした。日本に来てくれるなんて夢みたい(円安なのでな)!

面白かったー!めちゃくちゃ面白かったです。

女の半生を歌う歌詞や舞台って、どうしても濡れ雑巾みたいな…ベチャベチャした内容が多い気がしてましたが、SIXは違います。メイン楽曲からして、軽快なリズムに乗って「離婚、打首、死亡、離婚、打首、死別」とポーズをキメていく(これヘンパチ王妃早覚えフレーズらしいですね。知らなかった)。

ブラックジョークが利いていて、全員覚悟が決まっている。湿度ゼロです。私には合ってた。

80分ほどの短い舞台で、最初から最後まで王妃ライブ。ミュージカルというよりコンサートでした。

(映画と比較するとチケット料金が高額なので経済的に無理をするべきではないが)お勧めです。

ケンブリッジ大学の学生トビー・マーロウとルーシー・モスが、大学ミュージカルシアター協会からエディンバラ・フェスティバル・フリンジへの出演をオファーされ、最終学年で制作(2017年)。高評価を受け、ウエストエンドで上演され、とうとうブロードウェイ上演。ルーシー・モスはブロードウェイミュージカル史上最年少の女性監督となったとのこと。

登場人物全員女性。バックバンドも全員女性(侍女たちという設定)。

下記全部バレ

最初からずっと泣いてたんですが、たぶん面白かったのが嬉しかったのだと思います。

漫画の見開きページで「ドン!」って見得切り演出する、あれを全員女性で、なおかつ格好良くやってくれるのって、シンプルに気持ちいい。快感です。

採用する史実を決め、再構築して脚色する。脚本のうまいミニ大河ドラマを6本見た感じ。

どの王妃もオモロ要素があり好きです。

性格も体型も様々。全員が気の強いタイプではなく、何をされても耐えて愛する性格の王妃もいるのがいいです。その方が向いている女性も当然いらっしゃるでしょうから。

私はアン・ブーリンが、色々な首ネタを持ちだしてくるのがつぼだった。歌からして「Don't Lose Ur Head(怒らないでよ)」だし。

マッチングアプリ演出のアン・オブ・クレーヴズ「Haus of Holbein」も好きです。9インチのウエストってなに?前面だけの横幅?と怖くなって調べたら、ドイツ語の9を掛けた洒落か…。よかった、さすがにコルセットを絞ってウエストを22センチにしたら死ぬ……。(あと絵の具のホルベインの名前の元になった画家さんなんですね)

キャサリン・ハワードの「All You Wanna Do」はサビの意味合いが徐々に変わっていってぞーっとした。「ジェニーの記憶」だ……。

キャサリン・パーの「Don't Need Your Love」は、Yourの指す人物が変わって、歌がパワーに満ちたものになるところがよかった。ところでキャサリン・パーのsurviveは、死別という訳はしっくりきてなくて、もっと重い、辛うじて生き延びたみたいなニュアンスの言葉があればな…という気がします。

史実ジョークや言葉遊びがぎっちり詰まった気配がしたので、私にもっと教養があれば…せめて英語に堪能であれば…と思いました。字幕は健闘してくれて「スパイスガールズの口調」とか書いてくれたんだけど、もうそこでジョークの面白さは死んでしまうし。
歌のメロディラインにグリーン・スリーブスが混ざるのは分かるのですが、リング・ア・リング・オー・ローゼズが混ざる意味は分からなかったり。

字幕は左右にありました。真下にある形式は映画で慣れているので、画面から目を離さずに読むことが可能ですが、今回は字を読むためにパフォーマンスをまったく見られない瞬間がかなりあり、字幕を嫌う人の感覚ってこれか〜!と体験できました。確かにこれはストレス〜!